夜叉ヶ池

夜叉ヶ池

岐阜県と福井県の県境にある夜叉ヶ池。
白雪といふ女神あり。
その御身にて、越前は板取、帰、九頭竜やがて日野川
美濃の国は、名だたる揖斐川
恵みの暴れ川つかさどる龍神なり。
人との約定ありて、御身ただ鎮座し、
剣ヶ峰におわす許婚への想いに身を焦がすばかり。
日照りに雨乞、諍い合う人ら
約定を忘れ龍神との掟を破り
白雪、大水にすべてを呑み込み尽くし
愛しき君の元へと飛び去りゆく

「夜叉ヶ池」より白雪

作品について

iPadPro、ApplePencilによるフルデジタル作品

戯曲「夜叉ヶ池」がモチーフ。
ここに描かれている白雪という龍の姫がたいへん愛らしく、自然神らしい。
各地の龍伝説を描いてみたい、という気持ちがわいた時、一番最初に描きたくなったのが、この白雪という龍の姫だった。

人との約定に縛られて自らの意志で動くことを封じられている、という状況。
「人間の世界など全て壊れてもかまわない」という激情と、相反するかのような「一人の人間の娘を我が子のように愛しむ」姿。
約定が人間側から破られた時の歓喜。
それら白雪の描写は、人智を越えたところに依る力というものの在り方の一つを、実にわかりやすく描いていると感じている。