江戸時代の土蔵ギャラリー土環舎(とわや)

越前町小曽原に拠点を移してから、実に多くの良縁に恵まれた。
まだ一年、もう一年。
本当に、あっという間だった。

世の中の情勢は不安に包まれたままながら、わたしの作家生活は今までになく充実している。不可思議、というレベルに達した、越前でのつながりの賜。

4月29日にオープンした小曽原の新名所、土環舎(とわや)さんも、その環のひとつ。

江戸時代の土壁や梁をそのまま見せた内装。
長年放置された農家の土蔵は、当初はかなりの傷み具合だったという。
それを、ほぼお一人で蘇らせたオーナーの千葉亮子さん。

真冬の厳しい、雪積もる中。
コツコツと独力で、ささくれだった古材の床や柱を塗り直して磨き。
今では貴重な資料的価値も高い古民具を塗り直して磨き。
触れると崩れてくる土壁も、当時のままの姿をできる限り残すためコーディングのみに留め。
その上で、照明のレールを設置して、しっかりギャラリーにふさわしいライティングを導入されている。

さらに素晴らしいのは、千葉さんのレイアウトセンスだ。

古いものと新しいものが一体となり。
なにげなく置かれた備品までもが、コンセプトの「土生土帰」を語っている。

五月のさわやかな晴天が似合う。
静かに降る雨が似合う。
夕暮れの物憂い日差しが似合う。
里山の草木が似合う。

水を良質に保存するという越前焼きの水甕にたくわえられた小曽原の水を使い、製法特許のある越前焼きドリッパーでたてるコーヒーは、おいしい。
館内に、よい香りが満ちる。

そんな場所の記念すべきオープンの時に作品を展示させていただけたことは、わたしの今までの作家活動の中でも特に思い出深いものになっている。

土蔵ギャラリー土環舎(とわや)
所在地:福井県丹生郡越前町小曽原36-12
「えちぜんちょうおぞわら」と読む。
土日のみ10時~16時30分までの営業。
ホームページ 「土生土帰」の旅【小曽原】|土環旅 https://towatabi.com/